円形脱毛症とは
円形脱毛症とは、円形や楕円形の脱毛が生じる疾患です。一般的には毛髪に10円ほどの大きさの脱毛と思われがちですが、頭全体に広がるものや、まつ毛や眉毛など、体毛にもおよぶ重度のものあります。
円形脱毛症の特徴は下記のようなものがあります。
- なんの兆候もなく髪の毛が減り始めた。
- 頭部に地肌が見える箇所がある。
- 脱毛が円形または楕円形であり、境界がはっきりしている。
- 脱毛箇所の周辺の毛を引っ張ると、簡単に抜け痛みもない。
- 朝起きた時、枕に抜けた毛が見える。
円形脱毛症の病態
円形脱毛症の原因は、毛の生え代わりの周期の異常や、内分泌障害、自律神経障害などが考えられていましたが、現在では、自己免疫がその本質であるとされています。 ウイルスや異物というような、体にとって有害なものを防衛する機能を持った免疫細胞が自身の組織を異物と認識し攻撃してしまう病気であり、免疫が毛根を攻撃することで脱毛を起こしてしまいます。
円形脱毛症の種類
円形脱毛症には、様々な種類があります。 円形にならないもの、体毛にまで症状が及ぶものがあるので注意が必要です。
斑状型
円形脱毛症の中では典型的な症状で、豆粒程度の大きさのものから500円程度の大きさのものまで、円形から類円形の様々な大きさの脱毛箇所が1~数か所できます。
びまん型
はっきりした円形の脱毛箇所が目立たないうちに、急速に頭髪全体が抜け出します。できるだけ早期に適切な強さのステロイド外用薬や、場合によっては、ステロイド内服・点滴が必要になります。これらの治療選択は経過を見ながら決めていきます。
オフィアシス型
生え際にそって脱毛が生じます。頭頂までは進まないことが多いです。ルックスへの影響はマイルドですが、医学的には治りにくいタイプの円形脱毛症です。種々の専門的治療を長期にわたって行うことが多いです。
全頭型・汎発(ばんぱつ)型
全頭型は脱毛が頭全体に拡がった場合を言い、汎発型は頭髪だけではなく、眉毛やまつ毛、腋毛などの体毛が抜け落ちてしまう場合を言いますが、型(タイプ)と言うよりは、重症度を示した表現と言うべきでしょう。治療は長期にわたり、根気が要ります。いっしょにがんばりましょう。
当院の円形脱毛症の専門治療
当院の円形脱毛症の治療は日本皮膚科学会円形脱毛症ガイドライン作成委員である院長が、医学的データと最新の医学情報に基づいた治療を行います。代表的な治療方法をご紹介します。
1)ステロイド外用薬:脱毛面積が小さく、発症からあまり期間が短い(半年以内)時には、ステロイド外用薬が治療のメインになります。
2)抗ヒスタミン薬:アトピー素因のある方々では、抗ヒスタミン薬の併用が有用であることを院長らは論文発表しています(Inui et al: J Dermatol 36: 323-327, 2009. )。
3)ステロイドパルス療法:急速に進行する円形脱毛症で行うステロイド点滴治療です。院長らのグループがその有効性を論文報告しています(Nakajima, Inui and Itami: Dermatology 215:320-324, 2007.) 。入院が必要ですので、当クリニックで検査後、院長の阪大病院診療枠に受診頂きます。入院予約の上、後日阪大病院で点滴を行います。退院後はクリニックで院長が再びフォローアップをさせて頂きます。
4)局所免疫療法:DPCP, SADBEという物質で患者さんの頭皮にかぶれをわざと起こして、円形脱毛症の自己免疫状態を改善していく方法です。なかなか治らない難治例でよく行われます。治療にはいくつかコツや工夫が必要です(乾 重樹:J Environ Dermatol Cutan Allergol 9:231-237,2015 )。専門医のもとで行うべきです。治療期間が長くなることが多いですが、いっしょにがんばりましょう。
5)エキシマレーザー:有害な波長部分を除いた紫外線のレーザーです。アトピー性皮膚炎を合併されている方で湿疹部にも併用しながら照射を行います。
6)JAK阻害剤内服薬:脱毛面積が頭皮の50%を越え、かつ、6か月以上自然な発毛がない患者さんが適応となります。現在リットフーロ(JAK3/TECファミリーキナーゼ阻害剤)とオルミエント(JAK1,2阻害剤)があります。どちらも内服薬で免疫抑制的に働きます。そのため感染症や帯状疱疹をはじめ種々リスクはあることに理解を頂く必要があります。診察時詳しく説明させて頂きます。有効性は頭皮の20%以下の脱毛にまで治る方がだいたい半数と考えて頂ければと思います。費用は高めで月4-5万円の自己負担となります。また1,3,6ヶ月後、その後6ヶ月おきに血液検査、尿検査、胸部レントゲン写真撮影が必要となります。