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エビデンスに基づいた乾癬アドバイス 1. 食生活 (1)グルテン
この20年くらいで乾癬の治療薬は大きく進展してきました。従来なら治療が難しく困っていたような方々にも効果のよい薬剤が提供できるようになりました。しかし、薬剤のみに頼って症状を抑えるのではなく、日常生活の工夫で治したいと思われるのは当然です。そのため患者さんにはいろいろ生活上のアドバイスをすべきと思います。
ところが、日常診療で時間の関係でなかなか詳しく説明できないことも多く、いろいろな事柄ついてこのブログで記載していきたいと思います。アドバイスについて大切なことはエビデンス(医学的な証拠)に基づくことです。「都市伝説」や「迷信」「うわさ」に影響されていては無駄な制約を受けることになり、患者さんの人生を楽しむという一番大事な治療目的が損なわれることになります。
と言いながら、いきなりですが、「食べる」こと(これは人生の大きな楽しみなのですが)、食生活について述べてみたいと思います。
まずグルテンの影響です。グルテンは小麦・大麦・ライ麦などに含まれる成分です。このグルテンへの過敏反応で起こるのがセリアック病という消化器疾患です。グルテン摂取後、腸粘膜に炎症が起こり、下痢、低栄養、体重減少を来します。
過去の症例報告によると、セリアック病を合併した、53歳男性の乾癬患者さんがおられたのですが、ステロイド外用薬、シクロスポリン内服といった通常の乾癬治療が全く効かなかったそうです。ところが、セリアック病の治療のためグルテン除去食を厳密に行ったところ、乾癬の治療は何もしていないのに1ヶ月で皮膚がきれいになったそうです(下図 A:グルテン除去食前、B:グルテン除去食1ヶ月後)。
乾癬の患者さん皆さんにグルテン除去食を勧めるものではないですが、もし小麦・大麦・ライ麦などを食べると腸の調子がおかしくなるようなら、セリアック病を疑い、消化器内科を受診してみてもいいのではないでしょうか?
(ただしセリアック病は欧米では約100人に1人と言われますが、日本人では2000人に1人程度で欧米よりはまれのようです。)
文献 1)Addolorato G, et al: Rapid Regression of Psoriasis in a Coeliac Patient after Gluten-Free Diet: A Case Report and Review of the Literature, Digestion 2003;68:9–12
文献 1)より引用