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論文評(2):村田洋三,「母斑」という用語について(皮膚の科学17:137-150), を読んで
今回の論文では村田洋三先生は「母斑」という用語の由来を調べられました。英語のnevusはラテン語のnaevusもしくはgnaevusが語源で「生まれつき」が原義で、「母斑」という言葉と結びつきません。他方、「母斑」の由来と思われる言葉はオランダ語で母斑を表現したMoedervlekもしくはドイツ語のMuttermalであることを見出されました。なぜなら、Moeder・Mutterは「母」を示し、vlek・Malは「斑点」を示しているからです。文献を探されたところ、明治9年に蘭方医村田正純著「対症方選」ではじめて「母斑」という言葉が用いられており、村田正純による翻訳であろうと推論されています。
なぜ「母」の「斑点」なのかですが、ヨーロッパでは「妊娠中の母の心理が子供の母斑になってあらわれる」という迷信があり、それに基づいた用語であったとのことです。本邦ではそのような考え方はなく、むしろ「母」という文字に「ものが生まれてくるもと(母なる大地など)」という意味があり、そこから転じて「もともとある」というようなニュアンスに感じられ定着したのでしょうか。
今回も村田洋三先生の詳細な調査に感銘を受けました。