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論文評(1):村田洋三,「リンパ管の能動的取り込み作用」を考える(皮膚の科学17:45-56), を読んで
雑誌「皮膚の科学」に神戸市立医療センター中央病院の村田洋三先生が「Dr. 村田のClinico-pathological notes」というシリーズものの論文を書かれています。村田先生は皮膚の腫瘍のスペシャリストで学会でもいつも鋭い、かつ、勉強になる意見をおっしゃられて、わたしの最も尊敬する皮膚腫瘍研究者のお一人です。
「皮膚の科学」のこのシリーズも毎回興味深い論説と見解にあふれており、いつも楽しみに拝読しています。「論文評」の第1回として感想を述べさせて頂きたいと思います。
今回の論文は、腫瘍細胞のリンパ管浸潤が専ら腫瘍細胞の能動的侵入によると思われがちであるが、実はリンパ管側にも腫瘍細胞を積極的に取り込もうとする働きがあるのではないかという提案をされています。
pigmented eccrine porocarcinoma, Intralymphatic histiocytosis, 色素性母斑のリンパ管内への移行の病理組織像と詳細に観察され、「リンパ管の能動的取り込み作用」の可能性を示されています。リンパ管は内皮が弱々しくしか観察できないので、通常のHE染色標本をみていても「あ、ここにリンパ管があるねえ」くらいですまされがちです。そこを鋭く観察され、革新的な考えを提出された村田先生の慧眼にはただただ驚嘆致します。論文中でも説得力と迫力あるlogicが展開されています。
事実、最近の研究では、リンパ管と腫瘍細胞が各々ケモカインとそのレセプター(CXCL12とCXCR4など)を発現しているとの報告もあり(Alitaro and Detmar: Oncogene (2012) 31, 4499 – 4508)、そこから考えると村田先生のおっしゃるとおり、リンパ管が腫瘍細胞を引きつけているのではないか、との考えもできると思います。腫瘍治療における新しい標的分子となる可能性もあるかもしれません。
いずれにせよ、村田先生の論説を支持する知見と言えるでしょう。